明日香医院
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小さな「お産の家」で、私たちがめざすもの
はじめに
産科医になったわけ
お産の家
手術室はない
おわりに

はじめに

医師になって7年目。2年前に自宅出産の介助を専門として開業した。そして今夏(雑誌が出る頃には昨夏となっているけれど)、ようやく小さな「お産の家」が完成し、入院のお産も始めたところである。

私たちの「お産の家」は、杉並区高井戸にある。緑に恵まれ、木立の中に建つ木造2階建ての小さな家である。1階部分が産院で、外来、リビング・ルームのほか、分娩室と2つの入院室がある。どの部屋からも窓の外に緑があふれる。私たちの家には、分娩台や手術室はない。産む人と生まれくるいのちのちからを信じ、あたりまえの手つかずのお産と子育てを援助すべく、相棒の助産婦、戸井口晃子さんとふたり、少ない数のお産をていねいにお世話している。

また一昨年の開業と同時に、所沢市のもりあね助産院の嘱託医として、助産院における定期的な妊婦健診のほか、分娩に際し医師が必要なときなど緊急時の往診も行なっている。

この2年間、相棒と私の明日香医院コンビ、それから、助産婦の田口真弓さんと岩田裕美さんのもりあねコンビ、あわせて4人で知恵とちからを出しあい、またまわりのすべての人に助けられ、いくつものお産を乗り切ってきた。本当にいろいろなことがあった。ふりかえれば、常に考え、話し合い、学びあい、そして反省しあうことを限りなく繰り返す、精一杯の日々であったように思う。4人がそれぞれに成長し、お互いの、そして産む人たちとの絆を強めてきた。長いようでいて、あっという間の夢中の2年間であった。

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