明日香医院
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「お産の家」便り
今日から2月。寒さの厳しい毎日ですが、お産の家の庭は、もう春の気配がしています。白梅の白い花、乙女椿の赤い花が今をさかりと咲いています。紅梅、雪ヤナギ、レンギョウやボケのつぼみもふくらんできました。ミモザも小さなつぼみをつけています。チューリップの芽も伸びてきました。大好きな花ばかりでうれしいです。この号が出る頃には、次から次へと咲いていることでしよう。よく探すと、はだかんぼうに見えるケヤキやモクレンの木も、芽をつけています。

私は産科医です。東京の杉並区高井戸で、小さな産院を開いています。理学博士でもあります。というのは、かつて地球化学の研究者をしていました。子どもを産んで、おっぱいで育て、お産のお手伝いをしようと決めて医科大学に再入学し、医師になりました。医大卒業後、都内のいくつかの大きな病院に計4年間勤めたあと、3年前の春、自宅出産専門で開業しました。

同時に、「お産の家」の準備を始め、ようやく昨夏、小さな木の家ができました。ここは豊かな緑に恵まれていて、敷地の向かいには栗林が広がり、2階にある自宅の窓からは大地主さんの森の木々を見遥かすことができます。

朝、目を覚ますと鳥がさえずり、夏の頃は夜になると虫の声がうるさいほどでした。冬の間もリビングはお日様でぽかぽかです。東の空にお月様もよく見えて、満月の夜には光につられるように赤ちゃんが生まれます。

初めてこの家で過ごした昨年の大晦日、森の向こうからいくつかのお寺の除夜の鐘がシンクロナイズして聞こえ、幻想的でした。ずっと都心のマンション暮らしだったので、そんな季節の移り変わりがうれしくて仕方がありません。今は冒頭のように、冬を楽しみながら春を待っています。
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