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> よいお産にかかわるみなさんへ
東京の片隅で、分娩台も手術室も持たない小さな診療所を開設し、5年。1000人の赤ちゃんが生まれました。98%以上のお産はお腹を切る必要なく生まれ、一つひとつのお産が、私にたくさんのことを教えてくれました。
なぜ、女の人は自然なお産を願い、自然なお産は、お母さんと赤ちゃんに何をもたらすのでしょう。
みずからのちからで子どもを産む喜びは、産む人に自分の身体に対する大きな信頼感や肯定的感情を呼び起こします。これはその人の一生涯にわたり、女としての自信にもなりましょう。「赤ちゃんのために切りましょう」は、よく聞かれる文言ですが、赤ちゃんはお母さんの身体を傷つけて生まれたいとは思っていません。大好きなお母さんの身体を大切にしながら生まれてきます。
お産のとき、周囲の人から大切にされる信頼感や安心感は、彼女が守るべき小さな人を大切にするちからをはぐくみます。母性は女の人に最初から備わっているものではなく、育つもの、はぐくむものです。子どもをかわいがるちからの源はお産にあり、そんなちからをはぐくめるようなお産をお世話することが、産科医療者の第一の使命だと思うようになりました。
医療者と産む人の間の信頼や愛情が、子どもに還ってゆく、そんなすこやかな循環を願います。愛されている子どもは、愛情のオーラを放ちます。お母さんから完全に愛されている自信は、深い自己肯定感につながると信じます。
真摯にいのちに向き合うとき、私たちが考えている以上に人は霊的存在であり、お産は霊的体験であると感じています。偶然に起こることはほとんどありません。大きなちからに守られて、いのちがいのちを産み、つぎの世代につながります。お産のお世話をすることは、未来を紡ぐことです。
現代では、自然なお産を願う母子は少なくありませんが、残念ながらそれを支える人は十分だとは言えません。支える手、支えるこころが増えることを祈っています。
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