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自然なお産のから学ぶ
きわめて若い年齢同様、高齢の妊娠・出産におけるリスクはよく知られる。35歳を過ぎると、その卵子も高齢化するため、妊娠率は急速に下がり、流産率は上昇する。胎児が染色体異常を持つ頻度も高くなる。子宮筋腫などを合併する頻度も高くなるため、ますます、妊娠しにくくなる。さらに分娩時の異常も増加する。体外受精妊娠による分娩では、常位胎盤早期剥離など、厳しい結果をともなう異常が増加することも知られてきた。したがって、高齢妊娠では、母体死亡率が高いことがわかっている。

最近の異常分娩の増加、ひいては帝王切開率上昇の一因は、出産年齢の高齢化にある。ヒトは生きものであり、妊娠・出産はいのちが次の世代につながるという、もっとも基本的な生命現象である。高齢出産や不妊治療を安易にすすめる風潮を散見するが、どんなに医療が進歩しても、本来の生殖適齢期は不変で、これを超えるべきではないことを知る謙虚さが、医療者にも産む人にも求められている。むしろ、生殖可能な若年齢のうちに産んでおく賢さがあってもいい。

さらに、日々の食生活、生活習慣など、妊娠したからといって、一朝一夕に改めることができるものではない。将来、みずからの身体で新しいいのちをはぐくみ、長期間にわたって育ててゆく可能性を考えれば、おのずと、みずからを律することができるのではないか。さらに子どもたちが育ちゆく未来を考えれば、守らなければならないものも、はっきりしてくる。

私たち医療者は、目の前の患者の要求や、目の前で起こる異常に対処するだけで精一杯になりがちである。また、将来妊婦になる人たちも、目先の仕事や遊びの前に、産む性であることをときに忘れる。けれども、医療資源のみならず、地球環境は有限である。いのちには、必ず、限りがある。過度な医療に頼ることなく、みずからの智恵と努力で、すこやかに産み、すこやかに育てることが、ヒトがほかの生きものと共存しつつ生き延びてゆくため、ますます必要になっている。


参考図書:大野明子・宮崎雅子、『いのちを産む』、学習研究社、2008年
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