もちろん、自然な経過にも異常はあり、医療を施さなければ、あるいは医療を施しても、死に至ることがある。事実、日本では、国が豊かになり、衛生環境や栄養事情が改善し、医療が発展するとともに、周産期死亡率(出産前後に亡くなる赤ちゃんの割合)や母体死亡率(同じく出産前後に亡くなるお母さんの割合)が急激に減少し、今や世界的にもトップレベルにある。けれども、それに反比例する形で、帝王切開などの医療介入率も上昇している。
周産期死亡率の低下のうち、一部は、帝王切開などの医療介入の福音である。けれども避けうる帝王切開や医療介入もあることを、私たちの施設における取り組みの結果は示している。
私たちの施設で行っている努力は、実はきわめて単純である。妊婦さんは、早寝早起きをして、季節の素材の和食を食べ、1日3時間の散歩で身体を動かし、身体の循環を整える。また、夫婦仲よく、赤ちゃんを心待ちにして前向きに暮らす。私たち医療者は、妊婦さんたちのそのような努力を支え、お産のときは、そばにいて寄り添う。異常に対処することも重要であるが、それ以上に、異常にしない努力が大切である。
未来に妊娠・出産を経て母親となるであろう少女たちと、彼女たちのパートナーたる少年の教育に携わる家庭科教諭の皆さまに、お願いしておきたいことがある。私たちの努力は、妊娠期から始まる。けれども、妊娠前からの暮らし方こそ、すこやかな妊娠と出産のために重要である。そのことを、未来に親になる人たちに、ぜひ、伝えてほしい。
まず、自分の身体を大切にしてほしい。刹那的な享楽に誘惑されそうになったときも、どうか、ご両親が大切に慈しみはぐくんできたいのちであることを忘れないでほしい。不特定多数のパートナーとの性交は、性行為感染症に罹患する機会を増やす。怖いのはHIVだけではない。たとえば、蔓延するクラミジア感染症は、不妊や子宮外妊娠の原因となる。また、早産予防のための産科の努力にもかかわらず、早産は年々増加している。早産の原因は感染であることが明らかになりつつあり、早産の増加と、若年齢からの活発な性行動との関連が示唆されている。さらに、避妊をともなわない性交は予定外の妊娠をもたらし、人工妊娠中絶は、将来の妊娠において前置胎盤や癒着胎盤など、重大な産科的異常の発生率を高める。 |
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