明日香医院
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子どもを産むということは、「いのち」を産むということです
●お産は、子どもをかわいがる力の源

子どもに「いのち」の大切さを教えたいと考えるならば、子どもに「あなたが生まれてきたとき、とてもいとおしくてかわいいと思った」「あなたはすごく大切な存在だ」ということをしっかり伝え、子どもをかわいがるのがよいと思います。

そして、子どもをかわいがる力の源はお産にあると思います。できれば、お母さんが自力で赤ちゃんを産む、自然なお産です。もちろん、産科的に異常があるとき、現代産科医療の恩恵を受けられることは、ありがたいことです。

この仕事をしていると、赤ちゃんはお母さんに「無事に産んでね」と頼んでいるように感じます。お母さんが難産になって、その結果ハンディキャップを負うことも望んでいませんが、かといって、お母さんのからだを傷つけて生まれたいとも思っていません。「とにかくお母さん大好き」というのが赤ちゃんからのメッセージです。

お産のとき、医療者の仕事として、もちろんからだが無事であるようにすることはとても大事なことですが、こころが無事ということも同じように大切です。お産のとき、医師や助産師にずっとそばについてもらって、大切にされて産んだという思いが、赤ちゃんに還っていき、お母さんが赤ちゃんを大事にする、そんな愛情の循環を願っています。

お産というのは、私にとってもそうでしたが、みずからのいのちが新しいいのちを産むという、生き物としてもっとも原初的な体験です。産んだあとのお母さんの表情は、しみじみと美しい。そして、自分で産めたという自己肯定感は、その人のその後の人生で、とても大きな財産になるはずです。自分のからだを肯定でき、自分の中にある女性性を肯定できると、気持ちは赤ちゃんにストレートに向かい、母性も自然と開きます。そして、お母さんはわが子を肯定することができ、お母さんに愛されている自信は、その子の自尊の感情を高めるでしょう。

もちろん、お産の現場で仕事をしていると、つらいことがたくさんあります。つらいことは10倍にも100倍にもなってこころに突き刺さり、100の喜びをも消してしまうかのようです。

けれども、つらいときにも現場から逃げないで踏ん張ろうと思えるのは、産んだ人たち、生まれた子どもたちから支えられているからです。「また、ここで産みたい」と言ってもらうことは、何よりの喜びです。「育児でつらくなったとき、お産後に入院していた3日間の幸福を思い出して、がんばれる」と複数のお母さんたちが言ってくれました。そんなとき、私たちの仕事には、やっていく価値があると思います。
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