明日香医院
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予防接種の話
第1回 予防接種を受けた方がいいですか
第2回 麻疹(はしか)
第3回 インフルエンザ
第4回 水痘
第5回 風疹(1)
水痘・帯状疱疹ウィルスは最初に感染したときには水痘を発症しますが、水痘が治癒したのちも、ウィルスは脊髄後根神経節という背骨のそばにある神経に潜伏して、ウィルスを持っている人が病気その他で免疫力が低下したとき、帯状疱疹を引き起こします。帯状疱疹は再度活性化したウィルスが知覚神経を通って、小水疱を帯状に発生するものです。水疱は知覚神経の支配域の皮膚に起こるため、たいてい片側だけ、胸や頭や、顔、そしてお尻などにできます。強い痛みを伴うことが特徴です。

高齢者、ガン患者さんなど、身体的につらい状況のときに帯状疱疹はとても気の毒です。こういった患者さんを診たことのある私は、ワクチンで水痘罹患をあらかじめ防ぐことによって、将来の帯状疱疹が予防できるのであれば、水痘ワクチンを受けておくことはのぞましいだろうと考えています。

水痘ワクチンは弱毒化水痘ウィルスを使った生ワクチンです。1歳以降、1回の任意接種です。水痘そのものにかからないことが目的であれば、1歳の麻疹と風疹の予防接種の後、受けるのがよいと思います。1回のワクチン接種後の抗体陽性化率は90%以上という報告がありますが、ワクチンを受けたけれどかかってしまったという例を見聞することも少なくありません。ただし、ワクチンを受けている場合、もしかかっても、非常に軽くすみます。

産科的に問題になるのは、妊娠中の水痘感染です。まず、妊婦の水痘感染は、肺炎を併発したりなどして重症化することがあります。さらに妊娠20週以前に水痘感染した場合、胎児にもウィルスが感染し、先天性水痘症候群と呼ばれる形態異常を発症することがあるとされています。具体的には皮膚の瘢痕形成や眼の異常などですが、その発生頻度は極めて低く、10%以内、平均3%程度と報告されています。このほか、出産直前の感染では、ウィルスが胎盤経由で胎児に感染し、新生児水痘を発症することがあります。発症から4日以内の分娩では児の死亡率が高いという報告もあります。
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