この本は、未来の妊婦さんと、現在の妊婦さん、そして赤ちゃんが生まれたばかりのお母さん、それから子育て中のお母さんたち、そしてそのパートナーのかたたちに読んでいただきたくて作りました。
産科医としての日々を暮らし、子どもを産むことはいのちを産むことと知りました。さまざまなケースに直面し、ご両親とともに悩み、ともに苦しみ、ともに悲しみ、ともに喜びをわかちあってきました。ときには、気持ちが伝わらないことや共有できないことに、ひとり、もがいてきました。そんななかで、いのちは選べないという私自身の考え方もはっきりし、伝えたいメッセージがふくらみました。
そんなとき、非常に幸運なことですが、遺伝相談や療育の専門家である臨床遺伝医、長谷川知子先生が、一緒に本作りをすることを引き受けてくださいました。長谷川先生のゆたかな経験と深い思考をお伝えする機会を得たことを、本当にありがたいと思っています。
情報過多と言える現在、少し年齢の高い妊婦さんのみならず、若い妊婦さんさえも、出生前診断の情報とは無縁でいられません。さまざまなレベルの情報が、さまざまなメディアや周囲の人たちから、あるいは医療側から、知らず知らずのうちに、好むと好まざるとによらず、ひたひたと忍び寄ってきます。妊婦さんたちは、生まれてくる子どものことを大切に考えていればこそ、そういった情報に無関心ではいられませんし、立ち止まって考えなければならなくなるでしょう。さらに、こういった情報は、妊婦さんのみならず、これから妊娠を考えているかたたちの耳にも入ります。
では、障害を持つ子どもを産むことをいたずらに怖れ、それを避けるために、最新の技術をためらうことなく使えば、それでいいのでしょうか。そのことで得るものはなにで、逆に、そのために失うものはなにでしょう。 |
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