明日香医院
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まえがき

まず、まえがきから紹介させてください。

この数年、お産の行く末、産科医療の行く末を真剣に考えています。小著『いのちを産む』(学研2008年)では、自然なお産のすばらしさを伝えると同時に、厳しくなる一方の産科医療や医療全体の状況について述べました。とくに産科医療の現在の問題点について書く作業には、先の見えない苦しみが伴いました。そして、考え抜いた結果、私が得た結論は「すこやかに産み育てる」という、本当にあたりまえの答えでした。

ところが、今、「お産の安全=帝王切開」という間違ったイメージが、ひたひたと広がりつつあります。すなわち、産科医不足から産科医療危機が叫ばれ、とにかく安全が第一とされ、お産は危ないから医療介入するのが当然とされ、いつのまにか、お産の安全を保障するのは帝王切開であるかのようなイメージが、作られつつあります。また、高次医療のためのセンター化であったはずが、人手不足のための集約化にすり替わってしまいました。産科医療側にそのような明確な意図があったとは思えませんが、緊急搬送先を探すのに時間がかかった事例の報道が相次いだことなども、この方向を加速したようです。したがって、これは、産科医療者、行政、マスコミ、そして産む人たちが渾然一体となって作ったイメージかもしれません。このままだと、お産には、産科医と助産師ではなくて、外科医と看護師と新生児科医と麻酔科医がいればいいということになってしまうかもしれないと危惧しています。

だからこそ、あらためて、「なぜ、自然なお産か」を伝えたいと考えました。

他方、私には、自然なお産について語り合えるすばらしい産婦人科医の先達や友人がいてくださいます。そういうつながりの中で、支えられ、励まされて、仕事を続けています。そこで、お産とともに生きてきた、そして生きている産科医にお話を伺い、今、現場にいる人が、何を考え、何を行い、何に苦しみ、何を喜びにしているかを伝えたいと考えました。(以上、まえがきより)

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