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おわりに
引用文献
いのちのつながり
卵子提供や精子提供による非配偶者間体外受精(AID)などの生殖補助医療について、生命誌研究館館長の中村桂子博士のご意見に賛同します。ご著書
6)
から引用します。
「個人の誕生は、『つながり』の中にあるのですから、生まれた子どものことまで考えれば、子どもが産まれる関係にある男女を支援するのが医療の範囲でしょう。」
中村さんの語られるところの「つながり」とは、母親と父親のゲノムと子どものゲノムのつながり、母親と胎児の身体のつながり、こころのつながりなど、さまざまなものを含みます。このつながりのどれかを切り離したり、手を加えるときは、まず、子どものことに目を向けるべきだと述べておられます。
自分のいのちはかけがえのない大切なものですが、同時に、38億年にわたるいのちのつながりの中のひとつです。自分や自分の子どものいのちが大切であるように、ほかの人のいのちも大切で、ほかの生きもののいのちも大切です。すべてのゲノムはつながっています。個のゲノムに執着することもいのちの性質のひとつではありますが、ヒトにはそれを超越する知性や理性もあるはずです。子どもに恵まれた夫婦は幸福ですが、子どものいない夫婦の幸福も存在します。
また、染色体の数の異常を持つ胎児も、その染色体は数がひとつ多いとはいえ、母親と父親から受け継がれたものです。出生前診断の結果、中絶を選択することは、そのつながりを親から一方的に断つことです。
さらに帝王切開術による出生も、母児のつながりを医療介入により人工的に切り離す行為です。したがってそれは、児の救命のためその処置が高度に必要であるなどの厳密な手術適応に基づき、最小限にとどめられるべきです。また、人為的につながりを絶つことは、母児のその後になんらかの影響を及ぼす可能性があることも意識されていいことだと考えます。
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