明日香医院
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「お産の家」便り
こんな家で、自然なお産のお世話をしています。いのちの力そのままに、産む、生まれる、そんなお産です。仲間と一緒にそんな仕事ができることは大きな喜びです。

自宅出張時代からの相棒である助産婦の戸井口晃子さんをはじめ、優しいけれど有能で機転が効くスタッフたちやお産後のOGの皆さんたちなど、たくさんの方々に助けられ、支えられ、仲良くやっています。

お産の家は小さくて、診察室、お産をする部屋のほか、洋室と和室の2つの入院室、あとはリビングとキッチンがあるだけです。診察室に超音波診断装置があるほかは、大きな医療機械もありません。手術室も分娩台もありません。「お産の部屋」は板張りで、天窓から空と竹が見えます。隣にお風呂が作ってあります。

赤ちゃんはお布団の上で、時にはお風呂で生まれます。産む人はパートナーにつかまり、四つんばいや側臥位の姿勢でお産をします。上の子どもたちもお母さんを応援します。

「お産の家」には手術室がないかわり、妊婦さんと一緒に帝王切開しなくてもいいお産をめざしています。手間ひまと時間をかけて、ていねいさでお産の安全を紡いでいます。

そんなお産をすると、赤ちゃんはその子の“いのちの力”そのままに、まっすぐに生まれてきます。お母さんも赤ん坊をそのままに受け止めます。産む人が、お産前後の感受性の高い時、家族や私たち医療者に大切にされること、それが、彼女の守るべき”小さなひと”をかわいがり、慈しみ育ててゆくちからの源になるように思います。お産の安全を守ることももちろんですが、私たちの仕事の一番重要なことは、そのことではないかと考えています。

昨年私たちのお産のあれこれを書いた 『分娩台よ、さようなら』(メディカ出版) を出版しました。お産の写真もふんだんに入っています。興味のある方は読んでいただけたら、うれしいです。
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