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> 「なかなかすすまない」分娩にどう取り組むか
はじめに
明日香医院のお産のデータ
考察
はじめに
「『なかなかすすまない』分娩」の命名者は井上裕美先生であろうか。言いえて妙、「生まれなくて困っている」お産を見守る介助者の心理を的確に表現していると思う。
当院は、医師1名、助産師7名で運営する3床の極めて小規模な産科診療所である。自然なお産をとことん追求すべく開設後5年になる。院内に帝王切開の設備を持たず、帝切が必要なときや必要になる可能性が相当予測されるとき、あるいは分娩に新生児科医の立ち会いが望ましいときは、高次施設に母体搬送をお願いする。
したがって、単純に分娩が遷延し、「生まれないから」分娩停止と診断、そこで帝切をしてともかく分娩を終えてしまうということは施設の能力上できない。つまり「なかなかすすまない」分娩は、生まれる、あるいは搬送するまで、いつまでも終わらない。その結果、生まれないと終わらないという事実に本質的に直面する。「なかなかすすまない」ことの深刻さは、伝家の宝刀「帝切」を持たないがゆえに、逃げ場がなく、きわめて切実に深い。「とにかくすすまない」事実にどこまでも向き合うほかない。
ただし助産院に比べてありがたいことは、陣痛促進剤という妙薬を持っていることであろう。いざとなれば、オキシトシンはかけがえのない味方、本当によい薬とありがたく使う。しかし助産院ではないので、がんばる限界も助産院とは異なるという状況もある。そんな中で、ともかく何とか生まれるまで、産む人とともに何としてもがんばる、苦しくてもつらくても、それ以外の選択肢はない。それが私たちの現実である。そして、自力で帝切できないからこそお産にとことんつき合える。それこそがよいのだとつくづく思う。
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