明日香医院
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【講演要旨】 『分娩台よ、さようなら』
はじめに
分娩台のないお産
手術室のないお産
お産のデータ
子どもをかわいがるちからの源−お産−
手術室のないお産
帝王切開術は産科医にとって伝家の宝刀です。それによってしか救命されない母子があり、なくてはならない手術手技です。産科医でありながら、手術室を持たないで開業することの是非について私見を述べます。

たとえ手術室があっても、産科医ひとりの手術は限界があります。逆に近隣に複数の高次施設がある条件下では、母体搬送は院内帝切より産科学的リスク回避に優り、母子にとって利益となるでしょう。

お産は医療の対象である以前に、生きる営みであり、生活であり、文化であることを考えれば、すべての分娩を3次施設で行うことが理想ではなく、必ず搬送は発生します。とすれば帝切および緊急搬送の頻度を徹底的に下げれば、手術室を持たない開業も産科医療の中で許されうると考えます。そこで、手術室を持たないかわり、帝切が必要になる状況を極力回避し、帝切が予想されるときは早期転院あるいは搬送の方針としました。

帝切となる主な理由のうち一般的なものを順不同で列挙すれば、難産およびそれに伴う胎児の状態の悪化、骨盤位、前回帝王切開の3つです。したがって、これらを減らせばよいことになります。そこで、難産を減らすために安産を増やし、また難産となっても経膣分娩をはかり、骨盤位は直します。必然的に前回帝切は減ります。

このような試行の結果、ほとんどのお産は経膣的に終えられることがわかりました。また、最終的に帝切となった症例は、高次施設での対応が必要なものがほとんどでした。というわけで、帝王切開ができないからこそ見えるものがあると思っています。
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