母性は一部の女の人にもともと備わっているものではなく、おそらく育つもの、はぐくむものです。子どもは未来だから、子どもたちの、ひいてはこの国の未来と地球の未来のために、母性は真っすぐに、強く育ってもらわねばなりません。

そのためにはまず、お産です。教育や社会の仕組みを論じる以前に、お産と乳児期の子育てが肝心です。お産を人間本来のあり方に取り戻すこと、つまり母となることを決めた女の人が、本来育てうるはずの母性が育つことの邪魔をしないようなお産であることが必要です。現代における子育ては一見困難に満ちていますが、それを全うできるだけの強い母性の“もと”は女の人の中にあるはずと信じます。

そして、母性の一番の本質は多分、子どもを慈しみ、かわいがる能力です。お産とその周辺のとき、女の人の感受性はホルモンの働きで高まります。このとき身体と心を大切にされた人は、彼女が守るべき小さな人をかわいがる力をはぐくむことができるようです。母になる人を取り巻く人たちは、お母さんが子どもをかわいくてたまらないと思えるようなお産と子育てができるよう、援助しなければなりません。お産を家族とともに迎えることの意味の一つもここにあります。