明日香医院
大野明子の著作など 講演 > 出生前診断の問題点
出生前診断の問題点
化学者から産婦人科医へ
出生前診断をすすめない理由
ダウン症のあかちゃんとの出会い
出生前診断が役に立つとき
質疑応答
  それまで社会とつながっていたのに、いきなり固有名詞を失い「トモくんのお母さん」になった。子どもはすごく可愛いけれど、突然社会から分断されて辛い。授乳中も研究者として論文を書いたりしていましたが、子どもはアトランダムに起きる。執筆は気分が乗ってきても、子どもが目を覚まして泣いたらそこで中断。授乳している間に頭がリセットされてしまう。そういう生活の中で、おっぱいや自然分娩の本などを読みあさり、「産婦人科医になろう」と決心しました。

自分がやりたくて、自分がいちばん人の役に立つ仕事ならば、そうするほかはない、と考えたのです。そして私立医大の2年に編入し、片道60kmの高速を飛ばして通学し、子どもが小学校1年になる35歳で医師免許を取得しました。

その後、日赤医療センターに就職し、それから日本医科大学、愛育病院などで4年間勤務生活をし、産科医としてトレーニングを受けました。同時に「こんなひどい介入をするから、こんな結果になるのだ」というお産もたくさん見ました。

北沢: 長い貴重な体験を踏まれて、いまがあるのですね。

大野: 決して長いとはいえませんが。現在は杉並区で小さな産科診療所をやっています。明日香医院と名づけました。私のところは分娩台も手術室もありません。(写真パネルを示して)この写真は和室のお産で、よつんばいで、あかちゃんがスルリと生まれて、お母さんが抱き上げたところで、お父さんとお兄ちゃんがのぞきこんでいます。

入院中は自宅に帰ってからの育児の練習期間だと考えています。例えば最初に紙おむつを使ってしまったらずっと紙おむつになってしまいます。そこで、私たちのところでは布おむつを洗って使っています。もちろんミルクは使わず、おっぱいの練習をします。

明日香医院には医師である私のほかに、助産師が常勤で7人います。自然なお産は24時間365日、昼夜なく起こります。いつでもお産につききることのできるようなスタッフの体制をとっています。

ほんとうに困ったときには促進剤を使いますが、お産は3日3晩かかることもあり、この間、一人きりで放っておかれれば、お産する人は不安になります。自然なお産をするということは、それを支え、そばで寄り添うことです。そのために7人がいます。産後は、夜中になると泣くあかちゃんがいて、助産師はおっぱいの手伝いなどのおつきあいもしています。
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