明日香医院
大野明子の著作など 講演 > 出生前診断の問題点
出生前診断の問題点
化学者から産婦人科医へ
出生前診断をすすめない理由
ダウン症のあかちゃんとの出会い
出生前診断が役に立つとき
質疑応答
出生前診断が役に立つとき

大野: 逆に、あかちゃんが元気に生まれてくることに役立つ超音波診断は積極的に行なっています。例えば、生まれてすぐ治療が必要な心臓の形態異常のあかちゃんがいます。最近の事例では、心臓に肺動脈がないあかちゃんがいました。おなかの中では臍帯から酸素がきているので心配はありませんが、出生後は呼吸しても血液を酸素化できません。出生前に診断がついていなくて、出生直後に不用意に酸素を与えるとますます具合が悪くなります。あかちゃんの脳は、5分間酸素がいかないと致命的になります。出生前にわかっていれば、すみやかに正しい対応ができます。

そういう心臓の異常に、妊娠20週で気がつきました。そこで胎児心臓超音波の専門医のところに一緒に行きました。そのときは21週だったのですが、医師は詳しい話を母親にしませんでした。後から「中絶しないよね」と問われて、私は「この妊婦さんはそういう選択をしない人だと思います」と答えました。確かにいのちは助かるかもしれませんが、手術が必要な重い病気です。こんなことならと中絶してしまう妊婦さんもいるかもしれません。

そのお母さんは、出産後に上のお子さんの世話を実家のお母さんに手伝ってもらう手配などをして、出産に備えました。このように、出生前診断がプラスに働くこともあるのです。

高次施設のように、すぐに新生児専門医が対応できるわけではないので、私のところでは出生前に調べて対応できることは、できるだけ調べておこうと思います。それも広い意味での出生前診断といえるでしょう。

北沢: 臍帯血のドナーが、提供後に白血病になったという記事がありましたが。

大野: 小児白血病は頻度の多い病気です。そういうこともありうると思います。移植された人も白血病になる可能性があって困る、という話だと思います。
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