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> 出生前診断の問題点
化学者から産婦人科医へ
出生前診断をすすめない理由
ダウン症のあかちゃんとの出会い
出生前診断が役に立つとき
質疑応答
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出生前診断をすすめない理由
北沢:
では、「出生前診断」について話してください。
大野:
私の出生前診断に対しての考えと思いは、
『子どもを選ばないことを選ぶ』(メディカ出版、2003年)
にまとめました。
出生前診断の専門家は大勢いますが、日々いのちの局面に接すると、私のような末端の産科医も、こういったことに無関係ではいられません。出生前診断の中心はダウン症の検査です。ダウン症は別名21トリソミーといって、23対46本であるはずの染色体に、21番目が3本あり、合計47本になっています。心臓に形態異常があったり、白内障になりやすかったり、筋力が弱かったり、知能発達の遅れがあったりします。
母親の年齢が上がると頻度が高くなります。35歳で1/300、40歳で1/100、全年齢を平均して1/1000くらいです。年齢が上がると卵子が古くなります。女の人は生まれた時点で卵巣に卵子の元をすべて持っていて、それが毎月数個大きくなり、いちばん調子のいいのが1個だけ排卵されます。イメージとしては冷凍庫で保存していた卵をレンジでチンして使うのと同じで、年齢が高くなると異常が増える理由がわかると思います。
「ダウン症探しをするかどうか」は産科領域にとって大きなテーマです。35歳を過ぎると高齢出産といわれますが、「検査しますか」と聞かずにダウン症の子が生まれると、アメリカでは医者を訴えることができ、医者は敗訴します。「検査を受けて、心の準備をする」とおっしゃる方もありますが、検査を受けることの先にあるのは中絶です。私は出産前に知っても出産後に知っても大差ないと思っているので、出生前診断は、基本的に中絶のための検査だと感じています。
こういった事情もあり、勤務医時代は35歳以上の方には「検査がありますよ」と知らせることを、医師間で取り決めていました。開業してみると、そういう話をしても、「自然のお産がしたい」という人は、そもそも、そういうことを考えていないことがわかってきました。35歳で妊娠したらダウン症の確率は1/300にすぎませんが、これに対して早産は5%もあります。また、例えば28週で早産したら生存率何%で、それを防ぐためにどうしたらいいか、心臓に穴のあいているあかちゃんは1.5%いるなど、「1/300以上の確率で起こる異常」について、産む人がすべてを勉強して、そのときどうするかを選択するなんて、そんなしんどいことはできません。
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自然なお産とおっぱいをめざして
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