明日香医院
大野明子の著作など 講演 > 出生前診断の問題点
出生前診断の問題点
化学者から産婦人科医へ
出生前診断をすすめない理由
ダウン症のあかちゃんとの出会い
出生前診断が役に立つとき
質疑応答
ダウン症かどうかを知るために羊水検査をする場合、人工妊娠中絶を前提とした検査です。中絶は妊娠21週と6日までにしかできませんし*、検査結果がでるまでに約1ヵ月かかりますから、中絶可能な期間に間にあうように結果をだすには16〜17週までに検査をしなければなりません。35歳の方なら初期の流産率が30%くらいあるので、そのほうがリスクが大きい。そこをクリアして10週になったところで、「こういう検査があるんですが……」と、大事な診察時間の半分を使って説明することになるのです。

自然に産んで可愛がって育てたいと思っている人は、どんな子が生まれてもOKなのです。そういう人に検査の説明をすると、真面目に受け止めてくださった上に、本を読んで勉強して、夫も巻き込んで話しあったりして、すごくたいへんなことになります。そして、検査の結果ダウン症とわかったら「中絶しようか、どうしようか」など、嬉しいはずの妊娠中にブルーな気持ちになって考えたあげくに、「私は検査を受けません」という返事をくださるのです。

私は、それを何回か繰り返したあと、“おかしい”と思うようになりました。出産のあと、もしこの人が当事者になったなら、目の前のその人に寄り添って考えればいい。私が話すと単なる情報提供のつもりでも、相手は私がすすめていると受け取るのだ、ということも学びました。信頼関係ができていると、きちんと受け止めて、医師である私にフィードバックしなければならないと思ってしまう。それもおかしいと思って、検査のことは、だんだん話さなくなりました。

*人工妊娠中絶は、母体保護法によって22週未満までと規定されている。
4 / 14

copyright © 2003-2011 birth house ASUKA, All Rights Reserved.