明日香医院
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おっぱいの話
第1回 子育てはおっぱいから
第2回 おっぱいが出るしくみ
第3回 それぞれのおっぱい
第4回 乳腺炎
第5回 おっぱいが足りない
<その1>
第6回 おっぱいが足りない
<その2>
第1回 子育てはおっぱいから
升森とも子 第2号, 12ページ, 1999

新人助産婦の私が最初に勤務した場所は、切迫の妊婦さんやお産後のお母さんをケアする褥婦棟でした。最初の1年間は、右も左もわからず、検温や沐浴などのルーチン業務を覚えることで精一杯でした。知識や技術が伴わないため、産後のお母さん達の質問には、デニーズのウェイトレスのように教科書に書いてあることを繰り返しました。

9年後、分娩室や未熟児室の勤務をへて、新人時代にいた褥婦棟勤務に戻りました。ある深夜勤務のとき、「助産婦さん、この子がうまくおっぱいを飲んでくれないし、おっぱいは痛いし」と泣きながら訴えるお母さんを目の前に、助産婦職経験は10年目になっているというのに、おっぱいのトラブルも解消できない自分が情けなくて一緒に泣きました。

そんなふうにすっかり自信を失って悩んでいたとき、「痛くない乳房マッサージ」ができる助産婦が入職してきました。私にとって、大きな出会いでした。

こののち「寝ても冷めてもおっぱい」の世界へ引きずり込まれ、現在にいたります。入職したばかりのパートナーと共に、長年マッサージ師がおこなってきた乳房マッサージを「助産婦の手で」を合い言葉として、上司や母乳外来のお母さん達の協力もえて、夢を実現すべく努力しました。この改革のプロセスのなかで私の支えとなったのは、おっぱいをふくませる母の顔、おっぱいを飲む子の顔、断乳後の母と子の笑顔でした。

かくもおっぱいにのめり込み、その魅力を身体で痛いほど感じていながら、いまだ明確に言語化できないもどかしさも感じています。とはいえ、今回は、おっぱいで育てる秘訣をお話しします。
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