明日香医院
大野明子の著作など 講演 > 出生前診断の問題点
出生前診断の問題点
化学者から産婦人科医へ
出生前診断をすすめない理由
ダウン症のあかちゃんとの出会い
出生前診断が役に立つとき
質疑応答
北沢: 私たちのあらゆる細胞が「医療のため」と利用されていることを、どう思われますか。

大野: 骨髄移植による白血病治療はそれなりに確立したもので、それで助かっている人も大勢います。個人的には評価します。ただ、骨髄移植はドナーが生存していますが、心臓移植はドナーの死の上に「自分の生」がある。そこまでして個体としての生命が助からなければならないのか、そこまで自分の生に固執しなければならないのか、と思います。

不妊治療も、行き着くところまで行っているように思います。かつては受精のタイミングをあわせたり、夫の精子を子宮に入れたりという方法でしたが、いまは卵子と精子を試験管であわせて子宮に戻す体外受精が主流です。運動率の悪い精子の場合は、卵子に穴をあけて中に入れる顕微授精もあります。

北沢: 顕微授精する精子も弱いと効果が上がらないからと、精巣上体から採るそうですが……。

大野: 無精子症という人もいて、精巣から精子を採ります。卵子も排卵直前のを採るのではなく、もっと若いものを採ります。採って何日か培養してから使います。子宮に戻すタイミングも遅らせています。ふつうの体外受精は3日目に戻すのですが、3日目だと卵としての出来がわからない。5日目になると胚盤胞という分化した卵になります。3日目に戻すと着床率が3割くらいだけれど、胚盤胞で戻すと5割近くに上昇します。3日目で戻して、5日目でもう1個戻すと更にいいなど、より幼若な段階で精子や卵子を採り、より分化した段階で戻す技術になっています。

胚盤胞移植は3〜4年前から盛んになりました。私は体外受精の臨床をしたことがないのですが、最近は体外受精が主流です。患者さんから治療歴を聞くと、まず体外受精して、うまくいかないと、つぎは顕微授精へと進むのが普通のやり方になっているようです。技術の差もありますが、症例を選ばず手当たり次第にやれば妊娠率は高くなります。その病院に初診で行って翌日体外受精という例もあり、確かに妊娠率は上がりますが、はたしてそれでよいのでしょうか。
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