明日香医院
大野明子の著作など 講演 > 出生前診断の問題点
出生前診断の問題点
化学者から産婦人科医へ
出生前診断をすすめない理由
ダウン症のあかちゃんとの出会い
出生前診断が役に立つとき
質疑応答
北沢: 話をもとに戻して、地球化学者としての経験が、どのように産婦人科医の仕事にプラスになっていますか。

大野: 私は科学的な教育を受けてきたので、科学は正しいと思っていますし、好きです。「産科医療は科学だ、科学は正しい、だから産科医療は正しい」という三段論法は、産科医療は必ずしも科学として成熟していないため、正しいとはいえません。また、医学は人を幸福にするための学問だと思いますが、現代医療は必ずしも人を幸福にしてはいません。

私が医学部で学んだのは、「医療は科学ではなく経験論である」ということでした。例えば私が習った生理学、すなわちバイオフィジックス(フィジックス=物理)の先生は、物理学が得意そうではありませんでした。また、解剖学で癌細胞かどうかを決めるのは、見た目の様子だったので驚きました。

科学は「自分の眼で見たものを考えるところから始まる」と思っています。科学と哲学は矛盾するものではないし、人体のバリエーションはとても大きいので、物理や化学のような法則化は難しいと思います。疾患の差より個人差のほうが大きかったりします。肉体だけでなく精神の働きが、とても大きな割合を占めると思います。

産科医は医者の3Kといわれていて、きつい、汚い、危険が伴います。医療訴訟の半分を産科が占めます。オーストラリアでのアンケートで「10年後も産科をやっていたい」と答えた医師は2割しかいなかったようです。

でも私は、お産のお世話をすることで、自分が人の役に立てることを、とても幸せだと思っています。
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