明日香医院
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診療所はどう運営し、どう生き抜くか
はじめに
私たちのめざすもの
お産の家
外来スペース

リビング・ルーム
入院ゾーン
手術室を持たない理由
経営について
おわりに
Y.手術室を持たない理由

“お産の家”には手術室がない。もちろん帝王切開が必要なときには、病院に搬送し、そのお力を貸していただくことになる。これまで90人ほどの赤ちゃんが生まれ、幸い搬送例はないが、そういう可能性は、将来もちろんありえる。けれど手術室を持たないのは、帝王切開手術の時には搬送すればいいと安易に考えてのことではない。

手術室を持たない理由はいくつかあるが、まずなにより私たちは、妊婦とともに妊娠中から一貫して帝王切開手術をしなくてもよいようなお産、つまり安産を目指すからである。私たちには帝王切開という選択肢はなく、安産の選択肢しかないのだという決心をしている。

また、もうひとつの大きな理由は帝王切開の頻度である。妊娠中からよく努力をすれば、帝王切開の頻度は100人から200人にひとりくらいに下がる。したがって、かくも小さな施設で、滅多に起こらないことのために大きな設備と人数を備えるのは現実的な選択肢になりえない。帝王切開は年間1件以下というほどに滅多になければおよそ慣れてもおらず、手術はかえって危険である。幸い東京には大病院も多く、滅多にないような手術こそは、人数も設備も整った大病院にお願いする方がはるかに安全に違いない。

私たちは手術室を持たないからこそ、私と相棒の助産婦、それと掃除や洗濯を手伝ってくれる人という少ないスタッフで、月に5ないし6件というわずかな分娩数でも存続しえる。逆にお互いに顔の見える関係での手間暇かけたお産が可能なのは、私たちのようにきわめて小さな施設であるからこそである。帝王切開を前提として施設を準備するかわりに、避けられる帝王切開は徹底して避け、さらにどうしても避けられない帝王切開のケースを、いかに速く的確に判断し、適切に対応するかだと考えている。それが私たちのめざす安全である。
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