明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む
第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事
私はメトロを使いません。メトロは確かに有効ですが、メトロ挿入時の激しい痛みや、挿入後のじわじわとした痛みはつらいし、またメトロで無理矢理子宮口を押し広げるのは乱暴で残酷な感じがして、好きになれないからです。また、結局陣痛促進剤が必要になることが多いからです。

そこで私たちのところでは、陣痛促進剤を使って陣痛誘発をはかります。日本で使われている陣痛促進剤には3種類あります。いずれも体内にもともと存在している陣痛を起こすホルモンです。

やむなく陣痛促進剤を使うとき、その目標はいかに自然陣痛に近いプロセスでお産を進めるか、です。なぜなら、繰り返しになりますが、自然な陣痛は無理をしないからです。薬を使って、さっさと産ませようとする姿勢は危険で、事故につながります。

私たちのところでは、前期破水のため誘発をはかる場合、破水後2日目以降、まず、プロスタグランディンの飲み薬を飲んでもらったり、点滴したりします。

プロスタグランディンの飲み薬は、1時間ごとに1錠ずつ、計6錠まで飲んでいいことになっています。けれども私は2時間ごとに計3錠程度飲んでもらって「おしまい」にします。なぜなら、飲み薬は急に強く効き、強すぎる陣痛(これを過強陣痛といいます)を起こすことがあります。その結果、胎盤の血行が悪化し、赤ちゃんの状態が悪くなります。そんなとき、飲んでしまった薬を吐き出すわけにもいかず、場合によっては緊急帝王切開などの急速遂娩が必要になります。そのくせ効き方に個人差もあり、飲み薬だけではお産を終えられるほどの順調な陣痛を起こすことは難しいのです。
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