明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む
第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事
第19回 おっぱいの不思議−−母子をつなぐいのちの水

おっぱいは不思議です。お産の前はにじむ程度だったのに、赤ちゃんが生まれると、少しずつ張ってきます。赤ちゃんが小さな口いっぱいに乳首をくわえ、一生懸命吸うと、分泌量は日に日に増し、次第にその子の必要量を満たします。ホルモンの働きと言ってしまえばそれまでですが、妊娠・出産同様、いのちの不思議のひとつです。

おっぱいは、赤ちゃんにとっていのちの水です。お母さんの血液を原料に乳腺で作られ、赤ちゃんの身体をはぐくみます。3キログラムで 生まれた子どもが、3カ月後にはおっぱいだけで6キロ近くに育ちます。白い液体が、子どもの脳も、身体も作るのです。

おっぱいは赤ちゃんにとって完全な栄養ですが、それだけではありません。病気にかかりにくくする免疫物質など、栄養以外の成分もたっぷり含まれています。その完全性は不思議を通り越して、驚異的です。

お母さんは妊娠中と同様、みずからの血液、みずからの身体で、赤ちゃんを完璧に育てます。母と子のきずな、あるいは母子一体などの言葉がありますが、そんな言葉以前に、母と子はいのちの根本で分かちがたく繋がっています。自分自身のいのちで、新しいいのちそのものをはぐくみ、育てるという意味で、お母さんになることを引き受けた人の責任は重大です。
第18回 不安の解消   1 / 3

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