明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む
第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事
妊娠は本来正常なものです。また妊婦さんは、ほとんどの場合、若くて健康です。けれども、お腹の中に、お産直前には3キロにまで育つ赤ん坊と胎盤、羊水をかかえています。その重量を支えるのみならず、赤ん坊に常時、酸素や栄養を供給しなければなりません。これは、もともと健康な妊婦にとっても、相当の負荷です。妊娠は正常なものですが、正常と異常の瀬戸際でもあるのです。

また、妊娠は自然の摂理で、赤ん坊はいきものです。したがって、ある確率で異常も起こります。妊婦さんにとりたてて不注意や落ち度がなくても、起こることがあります。

たとえば、ほとんどの流産は、赤ちゃん側の因子で起こります。赤ちゃんにもともと何か異常があって育つことができないとき、赤ちゃんはお腹の中で亡くなってしまうため、流産になるのです。

妊婦健診の目的は、その時点で異常がないことを確認すること、あるいは、異常のサインを早めに見つけることです。異常がないと判断されるとき、たいていの場合は、次の妊婦健診くらいまでは、とんでもないことは起こりません。けれど、たとえ見落としがなくても、予期せぬ例外があるのが自然の理です。

旅行の日程が、健康な人でさえつらいほど無理ならば、妊婦にとっては、もっとつらいでしょう。その結果、正常と異常の瀬戸際で、異常に傾く可能性はあります。けれど、そういうことは、医師に許可を得ずとも、ふつうの思考力や判断力があればわかります。
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