明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む

第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事

小学校入学以来、学校生活の中で、ずっと競争をしてきたように思います。また、かつて研究者をしていたとき、競うことは必然でした。業績のために、ポストのために、研究費獲得のために。フェアではないやり方もたくさん見ました。とても疲れました。

けれど医師になってからは、競争とは無縁になりました。組織の中にあっても、ポストをのぞまなければ、競う必然はありませんでした。さらに独立してしまった現在、ますます、ひとと競わなくてもよくなりました。競争のかわりに、多くの人から支えてもらっています。スタッフ、先輩医師たち、お世話した人たち、家族、ともかく支えてもらいっぱなしです。支えられていることに感謝して、私たちが支えられるひとを支えること、それが仕事だとも思います。

世の中には競争に向くものと、向かないものがあるように思います。少なくとも、妊娠や出産、子育ては、競争に向きません。病気やお年寄りの介護もそうでしょう。効率や合理性とは、本質的に相容れない部分がたくさんあります。

たとえば、女の人は妊娠したとたん、競争に不向きになります。胎内の子どもを守る分、無理はききません。お産のあとも、小さな子どもをかかえていれば、競争には向きません。

また、たとえば、いわゆる標準と比べると、ゆっくり成長する子どももいます。標準通りでないといけないのなら困ります。その子はその子であって、ゆっくりなことが個性です。
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