明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む
第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事
どのお産も、皆さんがご存じの旧来のお産のスタイル、つまり、産婦さんは分娩台の上で仰向けに両足を大きく広げて固定され、医療者の指令にあわせて赤ん坊をいきみ出すお産とは、大きくかけ離れた姿であることは間違いありません。

なお、この連載では、産婦さんのご主人、つまり生まれてくる赤ちゃんのお父さんを「パートナー」とお呼びします。また、おふたりのことを「カップル」と呼ぶことにします。

わざわざカタカナ言葉を使う一番の理由は、それに相当する適当な日本語がみつからないことです。産婦さんとパートナーは、たいていの場合ご夫婦で、赤ちゃんのお父さんは、産婦さんの夫です。けれど、夫と表記すれば、なんだか呼び捨てのようですし、「夫さん」も変な日本語です。「ご主人様」も、夫婦は主従関係じゃあるまいし、使いたくはありません。

それよりなにより、産婦さんとパートナーが必ずしもご夫婦とは限りません。さまざまな理由から法律婚の形を選ばず、あるいは法律婚の形は取れないけれど、ふたりの間で子どもを持つことを決めた人たちも少なからずいらっしゃいます。古典的道徳観からすれば、あるいは立場が異なれば、そういうあり方に対する非難もありましょう。

この仕事をとおして、さまざまなふたりの形があることを知りました。私個人の責任でお産をお受けしている現在、妊婦さんやそのパートナーの方とのおつきあいも勤務医時代とは比べものにならないほど深く、また、そうでなければお産のお世話はできません。妊婦さんをその人のまま、パートナーとの関係も含めてまるごとお引き受けしてはじめて、本当の意味でお産のお世話ができるのです。
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